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四つの恋の物語のakrutmのレビュー・感想・評価

四つの恋の物語(1965年製作の映画)
4.0
当時の日活のスター女優たちの共演による、四人姉妹(+父)の恋愛模様をコメディタッチで描いた、西河克己監督の家族ドラマ映画。前年に公開された同じく日活の4姉妹ものである『若草物語』(ルイーザ・メイ・オルコットの小説とは全く関係ない)では、芦川いづみ、浅丘ルリ子、吉永小百合、和泉雅子という4姉妹であったが、本作では浅丘ルリ子が十朱幸代に代わり、他の3人は同じである。本映画の原作は源氏鶏太の『家庭の事情』となっているが、内容はかなり改変されている。例えば、小説は5人姉妹であるし、三女や四女の物語も異なっているようである。

前年の『若草物語』と同様に正月映画として公開されただけあって、平和でほのぼのとした雰囲気の中で、四人姉妹それぞれの恋愛(と言っても、中心に描かれるのは二女と婚約者の関係、三女と二人の男性の三角関係であり、四女の浮いた話はない)が群像劇のように描かれている。とても面白いというわけではないが、まあ気楽に安心して見ることができる。吉永小百合のお転婆キャラがなかなかグッド!相手役として幼馴染の男性を演じる浜田光夫とのコンビは定番であるが、三角関係のもうひとりの相手(有名企業の御曹司)を演じているのが関口宏というのはちょっとした見どころかも。私の年代でも、関口宏と言えば司会者というイメージしかなく、映画で見るのはなかなか貴重である。

でも、本映画で最も注目すべきは、笠智衆であろう。日活映画でスター女優たちと共演しているというだけでも貴重であるし、料亭の女中に言い寄られて浮かれたり漫画本を読んでいたりと、かなりユーモラスなキャラを演じている点も見逃せないポイントであろう。

芦川いづみの美しさはやっぱり特筆ものである。キャリア晩年の頃でちょっと適齢期の過ぎた女性を演じることが多くなっているが、それでもこの清楚な美しさは見惚れてしまう。『若草物語』では結婚して幸せな家庭を持って妹たちを優しく見守るだけのキャラであったが、本作では離婚して出戻ってきたという影のある女性の役であり、父親ほどの年上男性と不倫をしたり、バーで煙草を吹かしたりと、他の作品とはひと味もふた味も違った芦川いづみに会うことができる。ちなみに、数年後に結婚することになる藤竜也が、次女の十朱幸代の婚約者として出演している。
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