地味な夫と上流階級の妻という、育ちの違う夫婦の不仲と和解を描いた作品。加えて、お見合いに反発する姪の話が、物語に深みを持たせている。
戦時中に検閲に引っかかったものを、1950年代頭の社会情勢に合うよう作り直した、という経緯があるらしい。
物語に関しては、終盤の展開が急であり、納得感がやや欠けるように思われた。しかし、全体を通して、戦後の結婚観の変化が表れており、この点で大変興味深かった。
また、前半に多いギャグがなかなか可笑しかった。
物語と直接関係するわけではないが、1950年頃の文化を映像で見られるところも、高く評価できる点の一つである。ラーメンのような食文化に加え、野球やパチンコ、競輪といった当時の娯楽に関する描写が多く取り入れられている。
特に印象的だったのは、パチンコ屋を経営する戦時の部下との会話のシーンである。元部下は、経営は好調であるものの、パチンコの流行には懐疑的な態度を取っている。物質文明に対する問題提起が、高度経済成長期に入る前からなされていたことに驚いた。
一つ疑問に思ったのは、夫が妻から隠れてパチンコや競輪に行くことは、夫の人物像にどのような影響を与えるのか、ということである。この映画では、不仲の原因は妻にあり、妻が価値観を改めて解決する。夫側にも問題があるという話でないとすれば、上述した典型的な駄目な夫がする行為を描くことは、果たして妥当であるのだろうか。
最後に軽く映像面にふれる。小津作品にしては、カメラが移動しているとのことだが、どのような意図があったのだろうか。