青二歳

いのちの地球 ダイオキシンの夏の青二歳のネタバレレビュー・内容・結末

2.7

このレビューはネタバレを含みます

出崎哲さんは晩年この手合いばかり作ってるなぁ…
1976年に起こったダイオキシンの暴露事故“セベソ事故”を題材に公害の話かと思ったら、なんか人類批判をする壮大な話。“化学のヒロシマ”とかアレな言葉のセンスは相変わらずだし(原爆と化学薬品工場の暴露事故を同列に語るセンス!)、そういうスタンスは支持しないが、出崎(兄)の社会系アニメにしてはドラマチックな仕上がりで割に面白かったです。他がつまらなすぎるというだけかも。
劇中に出てくる親会社のロック社というのはロシュのことなのに、そこは仮名を使うのか…まぁ作中では悪の権化みたいな扱いだしな。プロットは「巨悪の大企業に立ち向かう正義の人」というベタな展開なので、どうしても親会社を悪役っぽく見せないといけませんものね。

もちろんこのジャンルらしく引き算しないので、いちいちクドいのが難点です…当時“化学のヒロシマ”と報道されたのかどうか真偽は分からないが、劇中でどんな正義を振りかざしても、こういう言葉をわざわざ入れるセンスからして信用できないんですよね、この監督。

ラストは“道徳の授業で使われそう系”のお約束で、「未来の地球が〜」とデカい主語が出てきます。今作はタイトルからして“地球”とか大きい単位がついてますが。このパターン逆効果だと思うのは自分だけでしょうか。
何が言いたいか全く分からんもんなぁ。化学物質に囲まれてる人類はケシカランってこと?それともそうしたものを生産する大企業がケシカランとでも言いたいのか?まぁ、自分の置かれた環境を振り返るのは良いことだと思うけど、こういうまとめ方ってどうかと思う。

例えば、合成洗剤を嫌って洗濯石鹸を使うのはいいけど、“無添加”石鹸を信奉する風潮はどうかと思うんです。石鹸はアルカリ剤の添加物がないと洗浄力が落ちる上に黄ばむんですが、メーカーによると“無添加”にしないと売れないため、致し方なくそのままの洗濯石鹸を販売するらしい。
環境に気をつけたいとか、肌のために無添加がいいとか、色々あるだろうけど、凝り固まってしまうと石鹸の正しい使い方もしらず頭ごなしに否定しちゃう事になる。この監督のラストのメッセージは、この時代には大切な示唆だったのかもしれないけど、今見るといびつさを感じてしまいますね。

カトリックの国で中絶が許される措置からして、ダイオキシンの毒性がいかに高いかなど、色々知ることはありましたが、監督らしい正義感の押し売りで相変わらずだなぁというのが率直な感想。これだから“道徳の授業で使われそう系”は疲れる。

あと、倍賞千恵子はやっぱり声優上手いですね…惚れ惚れする。




“道徳の授業で観させられそう”系も一応今作でラスト。記憶にあるもので見返せないものは保留。近くの図書館には観たいものが無かったので…再見できたらレビューします。
このジャンルで一番観たいのは宮沢賢治の小作品アニメーションなんですが、鑑賞の機会を得るのは中々難しそうだなあ。
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