このレビューはネタバレを含みます
主演萩原健一さん2019年3月26日に急逝。追悼公演二本立て鑑賞。
主人公(萩原健一)は、知人に頼まれて裏書きした手形のせいで借金を背負い、経営していた喫茶店も手形の渡り先に取られてオーナーが(中尾彬)変わっていた。借金返済と喫茶店を買い戻す為に実行したのが身代金3,000万円の児童誘拐だった。
ターゲットは自分の娘が通っている私立小学校のPTA名簿で見つけたPTA会長で開業歯科医の息子。
誘拐後、海辺へ向かう。道路脇から崖下に放り投げようとトランクから全身麻袋でくるんだ子供を担ぎ出すが、崖下の海中に数人の素潜り漁師の姿を見つけトランクに戻す。。
その頃、犯人の妻(小柳ルミ子)は生活の為に小さな造花工場で汗だくで働いていたが、職場にまで借金取りが来て無断で家を明けている夫に苛立ちあちこち電話をかけて探していた。夜、娘(高橋かおり)は同じクラスの隣の席の男の子が学校を休んでいてつまらないと母親に話す。自分の父親が誘拐しているとも知らずに…。
身代金が欲しい犯人、子供を無事に返して欲しい両親(岡本冨士夫と秋吉久美子)、犯人逮捕で人質と身代金を守り解決をはかりたい警察(平幹二朗/伊東四朗など)、新聞各社の情報の探り合い(丹波哲郎/三波伸介など)、下っぱ記者の仕事と恋人との板挟み(宅間伸/藤谷美和子)なと、それぞれのせめぎあいが絡む。
事件プロファイルの中に(スクラップブックに新聞の切り抜きを貼り合わせたものが懐かしい)、「吉展(よしのぶ)ちゃん誘拐殺人事件」など最悪を連想させる文字が目に飛び込み緊張感を高める。
取引場所での刑事の張り込みに気付き何度も取引を中止するうちに犯人は持ち金も無くなり、現喫茶店オーナーから腕時計で1万円を借りる。それもガソリン代で消え、取引時間を決めようにも腕時計は無いし、電話代数十円にも困りだしたころ、人質の男の子は発熱しぐったりしてしまう。進むも戻るも出来ずどんどん追い詰められ焦っていく犯人。果たして子供の命は。。
1981年大阪府豊中市で実際に発生した学童誘拐監禁事件を元に82年に公開された作品。
本作で萩原健一さんは日本アカデミー賞主演男優賞、小柳ルミ子さんは最優秀主演女優賞を受賞。お二人とも迫真の名演技だった。
小柳ルミ子さんの事務所は出演NGだったそうだが、萩原健一さんが直に小柳ルミ子さんを説得し作品に感銘した小柳ルミ子さんが是非出たいと事務所を説き伏せて出演が実現したとのこと。萩原健一さんの訃報に際し小柳ルミ子さんは、今でもその事を感謝していると自身のブログに綴っている。
今は亡き大物俳優が沢山ご出演。菅原文太さんがちょい役だったのはスゴい。
《ここから個人的不満》
作品終盤、犯人(萩原健一)が残りわずかな小銭で最後の取引のため電話ボックスで両親に電話をする。電話口の母親が「場所は!!時間は何時ですか!!」と必死に叫ぶ。犯人はおまえ達が警察に知らせたからだという苛立ちで「時間を決める時計も無い!電話する金も無いんだー!!」と叫び返し公衆電話を叩く。激昂した犯人がこの先何をしでかすか、小銭を使いきり通話が途中で終わるかもしれない緊張感高まるシリアスなシーン。
なのに…。「金がない!」で声を出して笑う客が結構いて。
はあ? 今笑う所?と興醒め。
まあ、段取りの悪い犯人は確かに間抜けで滑稽だけど、笑いを取りに来てはいないよねぇ。。もう1~2ヶ所、違う場面でも高笑いする人がいた。なんで??だった。
笑い取りはもっと後半で。ベタだけど、事件が終わり刑事が立ち上がる時にうっかり「ぷ~」っとオナラが出ちゃう場面。逆にそこではクスッともしないとは…。いったいどんな感性なんだろう??
意味不明な笑いにモヤモヤしてしまい、クライマックスを邪魔された。