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誘拐報道のmitakosamaのレビュー・感想・評価

誘拐報道(1982年製作の映画)
3.4
スカパーにて。個人的には凄い面白かった!

実際に起きた誘拐事件を元に映画化したのだと。それ故のリアリズムがエグい。

宝塚市で起きた誘拐事件。
借金で経営していた喫茶店を差し押さえられた男(ショーケン)。
息子を誘拐された医者夫婦(秋吉久美子・良く知らない人)。
捜査する警察(平幹二朗・伊東四朗ほか)
報道規制を強要される新聞社(丹波哲郎・三波紳介・大和田伸也ほか)

別にサスペンスフルな犯人と警察との攻防戦がある訳じゃない。捜査推理劇もない。犯罪者のヒロイックなニヒリズムも何も無い。

とにかく、ただ犯人の焦燥感だけが伝わる内容。医者夫婦は息子の安否を只ただ心配し憔悴。警察は犯人からの電話を待ち受け渡し現場の張り込みをしては失敗。新聞社は報道規制に焦らされるだけ。犯人の奥さん(小柳ルミ子)は不信な行動をとる旦那に不安を募らせるだけ。

本当に“誘拐という理に合わない犯罪”の無益さだけが淡々と続く。
でも本来はこういうものなんだろうな、と思い知らされる。犯罪で得する者なんか誰も居ない。そこにハラハラするドラマなんか無いんだと思い知らされる。

例えば犯人が途中、地元の友達にあったり、地元の幼なじみとカーセックスの際に誘拐された子供に会ったりしてる。これが、犯人逮捕の前フリでも何でも無い!借金取り(中尾彬)のゲスさも特に物語に作用しない。
それくらい、状況説明のみで物語性は稀薄している。だがそれがリアリズムを演出している。

これを鬼気迫る演技で表現したショーケン、奥さん役のルミ子の熱演で表現したのだから凄い。この二人の演技力あっての今作の評価だね。

しかしタイトルが「誘拐報道」なのに、報道側のドラマが薄過ぎるのは物足りなかったな。元々、読売新聞の連載が元になっていたそうで、劇中でも読売の名前がそのまま使われている。
報道規制の中でギリギリで働く新聞記者の葛藤こそが本来のテーマだったんじゃないのかな?ここはもっとちゃんと描くべきだったと思う。
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