Sari

ダンサー・イン・ザ・ダークのSariのレビュー・感想・評価

5.0
公開時から20年以上経て再見。
段々と背景が浮かび上がっていくオープニングで、嗚呼これだ…と朧げな記憶が蘇る。
(監督の意向で劇場版のオープニングと変わっていると思い出したが、どう違うのかはもう思い出せない。)

当時からバッドエンドを好む傾向にあったが、このダンサー・イン・ザ・ダークに関しては、あまりの救いの無さに無意識的に封印していたのか…。奈良の観光会館地下にあった松竹系映画館で観た唯一の映画として記憶しており、サントラは今でもたまに聴いている。歳月が流れ、今や「鬱映画」「トラウマ映画」として悪名高き映画として有名になっていることには、抵抗をも感じていた。

しかし、今改めて観ても壮絶で、とてつもない破壊力を持つ唯一無二のミュージカル映画である。ラース・フォン・トリアー監督という人は、ミュージカル映画と対極にあるような鬱作家である。
悲劇は起こり得ず、役者が突如として歌い出す従来のミュージカル映画に対するおそらくはアンチテーゼとして、真逆の手法で撮りあげたと言えるだろう。

チェコの移民であるシングル・マザーのセルマを演じる歌手ビョーク。歌声も素晴らしいが、視力を失いつつある目の焦点が合っていないような演技が凄い。
「ドグマ95」の手法を用いた手ブレカメラによる現実のシーンと妄想の中のミュージカルの撮影の対比。撮影監督はヴィム・ヴェンダースの作品で知られるロビー・ミュラー。
働く工場内の音や真横を通り過ぎる列車の音がリズムを刻み始め、ミュージカルに突入していく演出が素晴らしく、何度観ても心を揺さぶられる。

Björk -I've Seen It All
https://youtu.be/N8FJyhnC2Eo

Björk -I've Seen It All (Duet With Thom Yorke)
https://youtu.be/HSQZb6wJ86g

①2000/12/24 奈良観光会館地下劇場
②2022/11/10〜2022/11/11
③2022/11/11 DVD SPECIAL EDITION〈dts版〉再見
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