あずにゃん

ダンサー・イン・ザ・ダークのあずにゃんのネタバレレビュー・内容・結末

2.0

このレビューはネタバレを含みます

〝本当のことを言わないのは美徳か〟問題について。

度重なる不幸とショッキングなラストについ感情的になってしまうところだが、一度冷静に考えたい。

「セルマは自分の目の疾患が遺伝すると知っていながら子供を産んだことに対して責任を感じており、手術代を貯めて息子に目の手術をさせたいと思っている」

ここまでは自然な流れ。
そもそも息子を産むべきではなかったのでは?という意見は極論すぎるのでなし。

「精神的な動揺は目に悪いので、手術をさせるまで遺伝のことは息子には知らせたくない」

なるほど納得。親心が現れている。

ここで一つ確認したいのは、
【息子に目の手術を受けさせること】が、セルマにとっての第一優先であったということ。だからこそ、盗まれた手術代を取り返したのだ。殺人まで犯して。

ではなぜ彼女は法廷で「本当のこと」を証言しなかったのか?

言っても信じてもらえないと思ったから?
→おそらく違う。傍聴席にはセルマに好意を抱いている人も、信じてくれる友人もいた。黙っていることもある意味では大切な人への裏切りともとれないか。

ビルとの 沈黙の約束 があったから?
→ いくら友達夫婦に恩義があったとは言え、自分を陥れ、金を盗み、殺人犯にまでした相手との 約束 とやらを、守る必要がどこにあっただろうか。お人好しすぎやしないか。

繰り返しになるが、【息子に目の手術を受けさせること】が第一優先であれば、何も「本当のこと」を隠す必要なんてないはずである。

セルマが「ハメられて金盗られてこういう流れで殺してしまいました」と証言すること=息子が手術を受けられなくなること にはならないし、

殺人を犯した事実は変えられないとしても自らの証言で刑を軽くできたはずなのに、

それをしなかったが為に、自分の命 と 息子の目 を天秤にかけるような状況を作り出してしまい、結果的に息子の目は守れたが母親の存在は失わせてしまった。

その点で、最後まで「本当のこと」を言わなかったセルマの行動は不可解であり、合理的でない。彼女の愛が深すぎるのか、私が冷たいのか?

強く生きた彼女の最期を 無駄死に とまでは言わないが、助かる余地があっただけに、〝本当のことを言わないのが美しい〟とは思えなかった。よって低評価。
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