こんなに人間の裏側をえぐるように描いて、
それでいて、痛快で皮肉な作品はないと思います。
天才、川島雄三監督の傑作のひとつだと思います。
公団住宅に住む家族4人。
父、母、長男、長女の、一見どこにでもありそうな、
平凡そうな家族。
だが、この家族普通じゃなかった。
両親二人は働いておらず、
表向きは年金生活だが、実際は子供二人に不正や不倫をさせて、
借りた金は絶対返さず、贅沢な生活をしている守銭奴一家だった。
しかし上には上がいるもので、会社で不正をさせた長男の金を貢がせている、会社の経理の女がいた。
この女は経理をすべて取り仕切っており、
表向きは不正がないことにしている。
そして長男に金をちょろまかせ、
その金の多くを手にしていた。
そして、その金を元手に、
旅館を開業しようとしていたのだ。
この女を演じるのが、
若尾文子。
清純そうな表の顔と裏の顔の使い方がすごいです。
金髪にすごいもみ上げで、
片言の日本語をしゃべる小沢昭一の怪演。
凝ったアングルで、
この家庭劇を深く掘り下げるように引っ張っていくカメラ。
暗い階段の上り下りで、演者たちの心理状態を象徴的に表している。
新藤兼人が脚本書いてます。
ガメラシリーズでメガホンを取ることになる、
湯浅憲明が、助監督をしています。
カメオ出演のような、
ミヤコ蝶々の大阪弁に嘘がないのもいい。
「いいお母さん」のイメージが強い、山岡久乃が、
薄気味悪いくらいの腹黒さ。
父親役の伊藤雄之助に存在感でも負けてません。
お金に関して”しとやかな獣”たちばかりの中、
正直でまじめな男は命を落とす。
ニヒリスト川島雄三の面目躍如といったところ。
ブラックコメディとして鮮烈な輝きを今も放つ傑作。
家族劇としてこんなに愉しむことが出来るのが、
本当にすごいです。
オススメです!