がちゃん

しとやかな獣のがちゃんのレビュー・感想・評価

しとやかな獣(1962年製作の映画)
4.2
こんなに人間の裏側をえぐるように描いて、
それでいて、痛快で皮肉な作品はないと思います。
天才、川島雄三監督の傑作のひとつだと思います。

公団住宅に住む家族4人。
父、母、長男、長女の、一見どこにでもありそうな、
平凡そうな家族。

だが、この家族普通じゃなかった。
両親二人は働いておらず、
表向きは年金生活だが、実際は子供二人に不正や不倫をさせて、
借りた金は絶対返さず、贅沢な生活をしている守銭奴一家だった。

しかし上には上がいるもので、会社で不正をさせた長男の金を貢がせている、会社の経理の女がいた。

この女は経理をすべて取り仕切っており、
表向きは不正がないことにしている。
そして長男に金をちょろまかせ、
その金の多くを手にしていた。

そして、その金を元手に、
旅館を開業しようとしていたのだ。

この女を演じるのが、
若尾文子。
清純そうな表の顔と裏の顔の使い方がすごいです。

金髪にすごいもみ上げで、
片言の日本語をしゃべる小沢昭一の怪演。

凝ったアングルで、
この家庭劇を深く掘り下げるように引っ張っていくカメラ。
暗い階段の上り下りで、演者たちの心理状態を象徴的に表している。

新藤兼人が脚本書いてます。
ガメラシリーズでメガホンを取ることになる、
湯浅憲明が、助監督をしています。

カメオ出演のような、
ミヤコ蝶々の大阪弁に嘘がないのもいい。
「いいお母さん」のイメージが強い、山岡久乃が、
薄気味悪いくらいの腹黒さ。
父親役の伊藤雄之助に存在感でも負けてません。

お金に関して”しとやかな獣”たちばかりの中、
正直でまじめな男は命を落とす。
ニヒリスト川島雄三の面目躍如といったところ。

ブラックコメディとして鮮烈な輝きを今も放つ傑作。
家族劇としてこんなに愉しむことが出来るのが、
本当にすごいです。

オススメです!
がちゃん

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