詐欺師一家と彼らの上を行く悪女が軸になって入れ替わり立ち替わり登場人物が詐欺師一家の住まう団地の一室という限定シチュエーションへ訪れる形で人間の醜態を面白おかしく見せるシニカルでハイセンスなコメディ。若尾文子演じる稀代の悪女が男どもを振り回す台風の目となるものの、裏の主役は「団地」という、戦後復興の象徴そのもの。現代人からしてみれば、団地は昭和の古ぼけた集合住宅でしかないのだが……人口密集地で環境も悪く猥雑な人間関係に塗れ民心も荒廃させる都会を象徴するような、エレベーターもなく暗く閉鎖された白いコンクリート壁の聳え立つ無機質な長い長い階段がある団地は、どこか人間の欲を濃縮し増幅する一種の得体の知れない結界の如く、瘴気渦巻く現代(当時)の世相そのものとして、青森は下北半島育ちの川島監督が描いているのは間違いない。