囚人13号

ファウストの囚人13号のレビュー・感想・評価

ファウスト(1926年製作の映画)
4.5
ニコ動以来の再見。黒死病、風、稲妻、炎などあらゆる自然災害が表象されている。晒し台に立たされたカルミラ・ホルンの銅像(それこそ聖母像)のようなアップはムルナウ作品中でも特に傑出したカット。
ペストや群衆の暴力性(メイクまで酷似している)はラング脚本『Die pest in florentz』からの影響が伺えるが、虫歯菌コスにしか見えないメフィストのコメディチックな振る舞いから本作は高尚なものではなく、あくまで娯楽作であるというUFAの思惑が見て取れる。

グレートヒェンの叫び声が山を越えていく多重露光も、メフィストが空を覆って菌を撒き散らす冒頭の変奏になっていて抜かりない。
過剰な火煙の中で行われる、ラストのムルナウらしい高低差切り返し(死が救済となる!)には問答無用で泣いてしまう。
囚人13号

囚人13号