しろいはなび

おおかみこどもの雨と雪のしろいはなびのネタバレレビュー・内容・結末

おおかみこどもの雨と雪(2012年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ちょうど一個前に見たのが、「風立ちぬ」でした。風立ちぬは、現実世界をベースにしながらも、「仕事」という非現実的な世界に耽溺する主人公の話でしたが、「おおかみこどもの雨と雲」は、非現実的な世界をベースにしながらも、現実世界に喘ぐ主人公の話で、対照的な作品でした。

細田守は、「サマーウォーズ」を観たときには、濃厚な親戚縁者の関係性をただひたすらに好意的な面だけを描いているのがどうしても受け付けず、好きになれないというか、嫌悪感があって、それからずっと興味の範疇外に置いておいたのですが、ここ最近、IGN.comの記事で、「細田守のフィルモグラフィー」について扱ったものがありすごく興味深く読ませてもらったのと、TBSラジオの「アフター6ジャンクション」で東京国立博物館の松嶋雅人氏が、日本美術と細田守の比較研究について話されていて興味深かったのもあって、「もう一度観てみるか」という気になりました。

とっても面白かったです。非現実的な設定ですが描かれているのは現実世界でした。そして、たった2時間のうちに10年の時間を駆け抜けます。田舎に対する憧憬というのは今回の作品でも見受けられましたが、あまり気になりませんでした。それは、都会という都市空間から迫害されてやってきた、という設定だったからかもしれません。

最後の、雨が母親の手を離れ、狼として生きていくシーンでは、じーんと涙が出てきてしまいました。そして、その涙は、親の気持ちに寄り添ったことによる涙でした。親の気持ちがなんとなく、分かるようになってきたということにも驚きですが…

素晴らしい映画において、その要素を「これ」と名指すのは、非常に難しいものです。恋愛、出産、排除、成長、子離れ、社会、家族、コミュニティ、都市生活、シングルマザー、1つの家族の10年間を通して、ありとあらゆる要素を描き出すことに成功していると思う。「そして、父になる」を鑑賞した時と同じような痛みを、鑑賞中は感じました。