ジミーT

フェイドTOブラックのジミーTのネタバレレビュー・内容・結末

フェイドTOブラック(1980年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

この映画を考えると、どうしても「さらば映画の友よ インディアンサマー」を思い出してしまいます。(以下、この2本の映画の内容に触れます。)

この映画の主人公は映画オタクの青年で、(まだビデオも普及する前なので)自室に映写機まで置いて映画漬けの日々。そしてマリリン・モンローに似た女の子と知り合い、フラれたことをキッカケに、気に食わない連中を映画のシーンを真似て次々殺害、ついには「映画の中で」破滅する。
というサイコキラー的な話なんです。

「さらば映画の友よ」もかなり似通った設定で、映画オタク青年が女の子に傷ついて、そして・・という話ですよね。
しかし「さらば映画の友よ」がサイコキラーにならずにすんだのは、「さらば映画の友よ」の青年には一応は遊び歩いたりする仲間がいたり、父親が経営する家業の喫茶店を手伝ったり、その父親の悪友たちとの交流があったりなど、世間との接点があったこともあるかもしれない。
しかし何より中年映画マニアのダンさんというヒーローが登場したことが最も大きかったと思います。

ダンさんは1年365本の映画を観ることを20年続けると豪語するマニアですが、映画知識を溜め込むオタク型マニアではない。映画の登場人物になりきってスクリーンの中と外を行き来して日常を送るような男です。言ってみれば現実失格者なのですが、これが「狂気」を感じさせない、子供のように純真無垢で屈託のない男なんですね。ですからアンチヒーローというより映画マニアにとっての究極的理想のヒーローのような存在になりえているんです。
主人公の青年が女の子に傷つき、気に食わない男への復讐をするのも、ダンさんがまるで映画のように殴りこみをかける。愕然とした青年はダンさんの最期を「妄想映画館」の中で演出し、「上映」して映画は終わります。

だからもし、この「フェイドTOブラック」の主人公にダンさんがいたら。こんな「理想のヒーロー」がいたら。この映画の主人公はサイコキラーにならずにすんだのかもしれないんです。
いや違う違う。この「フェイドTOブラック」の主人公はいわゆる「浴びるように」映画を観ていた。せめてその映画の中でヒーローを発見できなかったのでしょうか?
人生、生きてゆくにはヒーローは必要だよ。「フェイドTOブラック」「さらば映画の友よ インディアンサマー」を比較して、改めてそんなことを考えてしまいました。

追伸
1979年製作の「さらば映画の友よ インディアンサマー」が、1969年という近過去をジャパニーズ・グラフィティ風に描いていたのも、ダンさんが「想い出のヒーロー」みたいになっていて、効果的でした。
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