ヤマニシ

風が吹くときのヤマニシのネタバレレビュー・内容・結末

風が吹くとき(1986年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

 序盤の鮮やかな色彩が核攻撃以降は鬱屈とした色合いになっていく様子が悲痛さを助長する。
 攻撃時のラジオ放送の緊迫した様子は迫真で、フィクションとわかっていても身構えてしまった。着弾の瞬間に音が止まり、色が一瞬反転するシーンは高まった緊張感も併せてかなり心にくる演出だった。
 緩やかに放射線障害に蝕まれていく夫婦は傍目に見て悲惨そのものだが、当の夫婦(主に夫)は大丈夫だ、これは○○だから問題はないと日常的な経験に基づいて判断・行動する。まさしく正常性バイアス。
 ただ、どこまでが普通なのかは判断しかねるが、あまりにも夫婦を愚鈍に描き過ぎではないかとも思う。夫は国家の指示に従順な質で、「何も考えずにただお上に従えばいい」といった発言をする人物が一体どれほど世の中にいるのか。そして放射能は危険といった知識は持っていながら、具体的な放射線による影響については把握していない無知さはストーリーの進行上都合がよすぎるのではないか(自ら考えることはせず、具体的な症状が出ても無知ゆえに行動を起こさないため話の展開が家の外に広がることがない)。妻も似たようなもので夫の意見に反対するそぶりを見せつつも正常性バイアスから脱することはない。
まあフィクションだし、そういう夫婦が主役の映画なのでそういうものですと言われればそれまでなのだが。
ヤマニシ

ヤマニシ