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日曜日が待ち遠しい!のakrutmのレビュー・感想・評価

日曜日が待ち遠しい!(1982年製作の映画)
3.9
映画館主人の殺人容疑をかけられた不動産会社の社長を助けるべく、社長の秘書が調査に奔走する姿やその顛末を描いた、フランソワ・トリュフォー監督の遺作となるミステリー映画。原作は、アメリカの作家であるチャールズ・ウィリアムズの犯罪小説『土曜を逃げろ』。

ファニー・アルダンが犬と歩く冒頭シーンはいつものトリュフォー作品っぽいが、その後に殺人が起こることで、白黒映像からしてもフィルム・ノワール的な雰囲気が漂ってくる。サイレント映画っぽい社長夫人のメイクなんかもそう。一方で、全体を通したコメディタッチなトーンや女性がメインで活躍するなどのプロットはフィルム・ノワール的ではない。まさかフィルム・ノワールをディスっているわけではないだろうが、見た目と中身の落差が本映画の特徴かもしれない。でも、トリュフォーはそんなことよりも、当時のパートナーだったファニー・アルダンを美しく、かっこよく映した作品を撮りたかったというのが一番の動機だろう。個人的には好みではないが、本作のファニー・アルダンは確かになかなか魅力的。舞台衣装ということでミニスカを履かせて脚線美をバッチリと強調するところなどは、トリュフォーのフェチ的気質が出ていてグッド。

ミステリ映画としてもなかなか面白いと思うが、ミステリに主眼がないために、描き方の中途半端感は否めない。個人的には、ジャン=ルイ・トランティニャンが演じる社長が犯人だと思わせるような編集をしている冒頭シーンから、社長から首を言い渡された秘書が、社長の容疑を晴らそうと見せかけながら、社長が犯人であることを暴くというストーリーを勝手に想定してしまったのがいかなかった。社長が犯人でないことが既知であるかのようなその後の展開に戸惑い、そのせいで、最後のどんでん返しについていけなかったし、秘書が社長をなぜ助けようとしたかもよくわからなかった。結局、私の最初の想定が正しかったということなのだろうか。
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