Kuuta

生きるべきか死ぬべきかのKuutaのレビュー・感想・評価

生きるべきか死ぬべきか(1942年製作の映画)
3.9
タランティーノが150分超かけたイングロリアスバスターズを100分足らずで語る超濃密脚本。ルビッチの省略が極まっており、一瞬でも油断すると振り落とされる。

ナチスの優生学に根拠なんてないし、その世界観自体が捏造されたフィクションに過ぎないが、彼らはコスプレのような軍服を纏って本当に人を殺し続けた。プロパガンダも繰り返せば真になる、を実行した虚像の集団(画面にヒトラーの肖像画は映し出されるが、本人は後ろ姿しか見えない)。

今作の主人公たちは「演技」という「ナチスと同じ武器」を手に抗う。演じた末に落下死するナチス兵と、軽やかにパラシュートで着地する主人公の対比。虚実の転倒に次ぐ転倒、その運動がナチスの指揮系統に狂いを生じさせ、未来を切り開く。歪んだフィクションにリアリズムではなく、あくまでフィクションで対抗する姿勢が痛快だ。
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