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飾窓の女のkitoのレビュー・感想・評価

飾窓の女(1944年製作の映画)
4.5
思わず「おー!」と声が出てしまうほど面白かった。この興奮は遥か昔、初めて「刑事コロンボ」を観たときに感じたそれと同じで懐かしい。

映画史的には犯罪映画を意味する「フィルム・ノワール」と呼称されるようになった最初期の作品群の一つとされているそうだ。すでにパブリック・ドメインなのだろう、YouTubeでも観られる。

フイルム・ノワールというと、個人的にはどうもギャングが出てきたり派手な銃撃シーンを連想してしまうが、本作はコロンボと同じ倒叙形式のサスペンス・ミステリーと呼びたい。

まあ、呼称、分類などは何でも良いのだけれど、ネタバレだけは「ダメ。ゼッタイ。」タイプ。何でもすぐ調べてしまう性格だけど、事前情報なしに本作を観られて本当に良かった。

犯人は最初からわかっていて、何とか発覚、逮捕を逃れようとする主役男女の心理が見どころ。おおよそハンサムとはほど遠くどこにでもいそうな中年オヤジのエドワード・G・ロビンソンだけど、さすがは名優の誉が高いだけあって、そのドジっ子ぶりにはつい同情してしまう。犯罪学の准教授と言っても、現実に犯罪当事者になると座学とは違うというのがひしひしと感じられる。

殺人などというのは、ほとんどの一般人にとってはおおよそ縁のない出来事で、二時間サスペンスなどには「そんな、バカな」が連発する。ところが、この映画を観ていると「ああ、もしかしたら自分も何かの拍子に、こんな目に遭うかもしれないなあ」と思わせられる。

初めましてだけど好みのタイプのジョーン・ベネットは ”魔性の女” の雰囲気が良い感じに出ていて、純真が服を着て歩いていると言われる⁈私なんかコロッと手玉に取られるに違いない。

Wikipediaによると、当時設けられていたヘイズ・コード(倫理コード)に準拠して結末は原作から改変されていると。そもそもヘイズ・コードというものが存在していたという事実を初めて知ったのだけど、結果的に、この結末の方が断然、良いと思う。

フリッツ・ラング監督といえばだいぶ以前に「メトロポリス」は観ているのだけれど、他の作品には関心がなかった。しかし、Filmarksを始めて以来とても評価が高いことを知り、本作を観てみたらハマった。本作と同じエドワード・G・ロビンソンとジョーン・ベネットが出る「緋色の街/スカーレット・ストリート」を早速観ようと思う。
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