豚肉丸

新しき土の豚肉丸のレビュー・感想・評価

新しき土(1937年製作の映画)
3.3
「日本に帰ってきたら許嫁と結婚する」という約束でドイツに留学に行ってた青年が帰ってきたが、彼は結婚を拒否して……というお話

如何にも30年代らしい映画。今とは価値基準も何もかも違うため「大丈夫なのかこれ…」と思ったが、日独同盟を強化するための日独国策プロパガンダ映画と知った上で見ると納得しかないプロパガンダ映画。
主人公の男のセリフ的に家父長制に否定したメッセージも込められているんだろうけど、最終的には家父長制と軍国主義に収まるのが面白い。「満州の土地を耕そう!」で終わる映画とか面白すぎるでしょ。

物語自体はまあ普通。特に可も不可もなく、退屈することは無いけど特段面白いわけでも無い。ただ、家父長制に否定して自分の将来は自分で決める!と言う男の視点と、決められた結婚ではあるものの、彼が大好きで彼のために家事や習い事ををこなしてきた女の視点の二つを交えて描いているのは面白かった。結局家父長制に落ち着くのは時代の問題ではあるけど、「決められた結婚で繋がるんじゃなくて二人で真実の愛を見つけ出す」って流れは綺麗だったし、ラストの火山を登る場面はかなり迫力があって良かった。(特に男側の後ろに光が差してるカットはとても凄い)
けど、やっぱりプロパガンダ映画なのでメッセージ性がかなり強烈。「日本人はお国(天皇)のために死ねる」だとか「お父さんたちが畑を耕して農業をしていたのが千年前から続いていたように、満州国も自分たちで耕して子供も後に続かせよう!」だったりと、戦前の空気感を直に感じられるから凄い。漫画と教科書でしか見たことなかったけど本当だったんだなぁ…と実感する。
そういえば、20年代に作られた初の日米合作映画『火の海』(未見)もだけど、二作品とも共通して火山が象徴的な舞台として登場するのは少し気になる。当時の火山は今で言う「サムライ!スシ!」みたいな日本要素だったのかな。
豚肉丸

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