くりふ

エクスタミネーターのくりふのレビュー・感想・評価

エクスタミネーター(1980年製作の映画)
3.5
【ニューヨーク駆除物語】

最近懐かしネタが増えてうれしい、ツタヤ発掘良品レンタルにて。

80年代バイオレンスをお安く幕開けたカルト作。10代の頃、仲間内でそこそこ話題になりました。バイオレンスやりたい言い訳としての、ベトナム帰還兵後遺症もの、の一本。

本作の主人公ジョンの場合、映画冒頭かの激戦地で、なにもそこまで、というほど空、飛びます飛びます爆風で。いきなり幕開けギャグでした。カートゥーンだったら地面にめり込んでますねコレは。

この時打ち所が悪かったのでしょうか、帰国後、一応正義のつもりでなにもそこまで、というほど人、殺ります殺ります残虐に。おまけに何故そこまでバイオレンス特盛するのか、本人もよくわかっていないご様子です。

秘密はタイトルにありそうです。Exterminatorとは害虫駆除業者のこと。害虫殺しには感情など不要。ベトナム人が害虫だと洗脳され戦地に送られた彼にとって、単に仕事場をスライドさせただけ、ということなのでしょう。

そしてプロの仕事には独自性が必要。なら目指せ残虐特盛オンリーワン!実際、ニューヨークで話題沸騰!となるのでした。

…などとみてみると、世界の警察を気取るどころか、気に食わぬ相手(国)を害虫認定して駆除にかかる、世界の害虫駆除業者としてのアメリカの病的驕りがこの時すでに、こんな映画に表れていたのかもしれません(←今こじつけてみた)。

そんなことはまあ、置いといても、トホホな残虐バラエティで笑いたい人にとっては今でもまあ、楽しめると思います。ロジャー・コーマン作品のバイオレンスに、オタク的拘りと変態風味を味付けたような仕上がりですね。

コーマンならこのネタ、80分程にまとめるでしょうが、独自の風味分、時間も上乗せされています。ダムダム弾の自作描写とかね。

おっぱいはさほど多くないですが、男の尻はけっこう長尺。あとオヤジミンチとか。リンチでなくミンチ。年食って熟成された分、若いのより美味しいんだろうか。○国だと偽装されて平気で売ってそうだな。

当時話題になったのは、なにもそこまで、という切れ味を持つベトコンナタによる首チョンパ。でろ~んと切れ文字通り、首の皮ひとつで繋がり下がる。このプロップ、スタン・ウインストンが担当していたんですね。

本作、意外と有名どころが参加していて、サマンサ・エッガーも出ていたのはすっかり忘れていました。あと、何と無名時代のサミュエル・L・ジャクソンも出ているそうな。どこにいるか、探してみよう!

ジョンを演じたロバート・ギンティも既に故人…というのは切ないです。あの宍戸ほっぺは特殊メイクではないようですが、演技力がもうちょっとなんとかなったら、少しはジョンに共感できたかしれません。

せっかくグリズリーも退治してくれたクリストファー・ジョージをあんな目に遭わせておいて、ぬけぬけと自分だけいい目を見る彼には、天罰が待っているとしか思えませんでした。最後にあの女神様が彼に倒れて来て欲しかったな。

しかし本作、時々ハッとする美しいショットもあるんですよね。ちょっと気が抜けない。グリッケンハウス監督はNYを拠点に活動していたからでしょうか、ロケによる現地での画づくりに意外と見応えがあります。スラム街のシーンで、一枚写真として飾りたいようなものもありました。

本作の後、心ないバイオレンス映画を数本、連打しつつフランク・ヘネンロッターやラリー・コーエンなど、NY変態系の映画をサポートしていたグリ監督。ジャッキー・チェン作品を手掛けるまで成り上がった(?)この人の足取りを、久しぶりに作品で辿ってみようか、という気になっています。…ヒマだったらね。

<2014.6.22記>
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