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草原の野獣のevergla00のネタバレレビュー・内容・結末

草原の野獣(1958年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

【“Shane” + “ East of Eden” 風】

先住民から奪った土地を開拓し、広大な牧場を経営するLee Hackett。息子EdとDavyには、なぜか自分を”Lee”と名前で呼ばせていて、妻には先立たれているシングルファーザーのよう。

欲しいものは力ずくでも全て得てきた成功者を自負するLeeは、息子達にも自分のような「強い男」を目指してもらいたい。しかし子供に負けてられん!と、自らも常に競い合っているために、勝ち気で横柄な長男Ed は越えられない壁を前に不満を募らせていく。

目的を果たすためには手段を選ばなくなっていくEd。人が死のうとお構いなしな様子は、段々サイコパスに見えてきます💦

安易に人の助けを借りるなと説教しつつ、Ed可愛さから、毎回助け舟を出して尻拭いに奔走するLeeの姿勢はダブルスタンダードに映ります。Hackett家の名誉のためというよりは、単純にバカ息子に甘いバカ親という感じなのですが、それでいて自分と競争して負けたEdを人前で笑い物にする心理が理解できませんでした。「男」として自分が息子に負ける訳にはいかないが、他人が自分の息子を貶めるのは許せないといったところでしょうか。
人を殺してでも獲得したい、勝ちたい、1番だと認められたいというEdの異常さは、最強オヤジとして名を馳せるLeeを己の力だけで超えてやろうという執念の表れなのでしょう。銃を好まず、思慮深くて大人しい弟Davyの方が、既に自我を確立し、親離れできているようでした。

上手くできたら褒めて、自分を超えたらもっと褒めて認めてあげる。息子に負ける日を父親が喜んで迎えなければ、息子はいつまで経っても一人前になれたと思えないでしょう。

先住民差別だけではなく、詐欺師の意外な登場により、父子の心理描写が一層複雑になって、彼らの異常さも際立ちました。立法前後における時代の変化に抗うLeeと、Hackett家の治外法権に目をつぶる町民らの変化も加わり、一筋縄ではいかない巧妙な物語でした。

最後はこれで良かったのか😐?Leeが自らの価値観に決着をつけるという形で終わりましたが、先住民に対する脚本家の罪悪感や憐憫の念を感じ取れましたので、法を遵守する時代の幕開けとして、Edが正当に裁かれるエンディングでも良かったのかなぁと思いました。

馬狩りのシーンは圧巻でした。
野生の白馬は、いかにも女の子という雰囲気の美しいお馬さん。手に入れようとした者は皆不幸になる、呪われた宝石のようでした…。

“….. you let a man do things for you think you should be doing yourself, and sooner or later he's gonna get the idea that he's better man than you are.” (台詞そのまま)

“Times don't change in this country where you breed a man soft. Without any spirit, a man's like a horse. If he don't buck the first time you put a saddle on him, he ain't worth having….”
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