半兵衛

イントゥ・ザ・ワイルドの半兵衛のネタバレレビュー・内容・結末

イントゥ・ザ・ワイルド(2007年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

恵まれた環境にいた青年による親や友人にも一切連絡せず飛び出した甘い考えによる放浪の旅がいつしか、アメリカの理想とする環境家庭でありながらその実は複雑な家庭環境で育った青年の状況に対する葛藤と苦悩の旅に変化して現代アメリカの状況とダブっていくような語り口が見事。だからこそ、厳しい環境で自己に大事なものは何なのかを悟る後半の場面は感動という生易しいものではない人生の真実の確信を突かれたようでハッとさせられる。でも所詮は大自然を舐めたアラスカへの旅なのでその報いを受けなければいけないという辛口なメッセージも添えるところにショーン・ペンの人間への深い洞察力が汲み取れる。

二時間半という長い尺をもて余したりすることなく、淡々とした交流などの描写の中から繊細に主人公の感情の変化を浮かび上がらせる演出が見事。スローモーションの巧みな使用や自然を美しく切り取った映像の数々もアメリカの風景と向き合う主人公の心情とマッチしていて見ごたえを増している。ただ物語としての起承転結はないのでストーリーの面白さを期待すると落胆することに注意。

『赤ひげ』の藤原釜足ばりのインパクトのある死に様ののち、くどくどとその後を描かずバッサリと終わらせる清々しいラストも好み。
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