ねぎおSTOPWAR

パラダイン夫人の恋のねぎおSTOPWARのネタバレレビュー・内容・結末

パラダイン夫人の恋(1947年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ヒッチコック監督1947年の作品。
セルズニックとの契約が彼をアメリカに呼びました。これは何作目だろう。ついに脚本にセルズニックの名前が!!

・・これだけの功績があるヒッチコック監督。大好きだからマイナーな作品も全部観ようと考えました。有名な作品はそりゃよく出来ています。と同時に埋もれた作品にはそれなりの理由があることを確認することにもなりました。
一つ前の「汚名」でも感じたのですが、今作もやや問題点の方が目立つ気がします。

プロットを想像すると、よく出来た面白い作品になりそうだとは思うんです。

以下雑なまとめ。
盲目のパラダイン大佐が毒により死亡。
若く美しい妻が逮捕される。
弁護士には、やり手で有能なグレゴリー・ペック
妻の信頼を裏切るつもりはないものの、美しいパラダイン夫人に惹かれる。
死の真相を知っている世話人アンドレ
ついに法廷へ
判事は感情に訴えるやり方が嫌いで、グレゴリー・ペックをよく思っていない。(実はパーティでグレゴリー・ペックの妻を不倫に誘うが断られている)
パラダイン夫人はなかなか全てを語ろうとはしないが、アンドレが殺した線で無罪判決を勝ち取ろうとする弁護方針には反対している。
通常弁護士は依頼人の利益を追求するものだが、パラダイン夫人との溝が見え隠れする。
突き進むグレゴリー・ペックは見事にアンドレを追求するが、彼はまだ何かを隠しているまま質問を終える。
ついにパラダイン夫人への質問。各自の思惑が交錯する。
そこにアンドレの自殺の報。
失意のパラダイン夫人は自らアンドレと暮らしたいがために夫を殺害したことを告白。さらにアンドレを追い込んだ弁護士を法廷で非難・・。
判事という立場は彼を徐々に傲慢にし、妻はそこに怒るがすれ違う。
一方、法廷で振られるという最悪な失恋をして妻の元へも帰れないグレゴリー・ペック。そこに妻がやってきて、負けても何を言われてもあなたは弁護士としてこれからも勝ち続けるのよ!と、この二人の未来はまだ明るいかなと思えたところでお話は終わり。

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おそらく観ている皆さんからすると、以下は凄く不自然。
・法廷で色々と明らかにする都合上、取り調べでも弁護士との打ち合わせでも、普通聞くであろう「あんたが殺したんだろう!」が出てこない。
・弁護士が依頼人に惚れてしまうというのはままあるが、定石は、冷静な自分は疑いを持ちつつ、気持ちは無罪を信じる矛盾の表現が必要かなと。それがない。
・アンドレはロンドンで何かを話しに来るが、いくらストーリーの都合でも、いかにも感情的に帰してしまうのが理解しづらい。聞いた後、いやそれは信じないというなら・・。


・・といったことなどは、上のプロットから本にする過程で、あるいは映像にする過程で起きたこと。

それは脚本セルズニックが悪いんじゃないかと思っているんですが、これってアンドレを疑うグレゴリー・ペックそのもの!?

ホントはね、別の作品のレビューでも二回くらい書きましたけど、ヒッチコックのせいかもしれません。
彼はいわゆる今時の演技達者嫌いだからなー。他作でも〈説明しづらい複雑な感情〉とか、〈自己矛盾を引き起こす状態〉などは、実はあまりお目にかからない。役者は出来るけどヒッチコックがやらさないというのもあるんですよねー。(割とシンプルに〈そう言われても困る!〉とか、〈えっ、あーどうしましょう!〉は多くある)
だからこんな本が来ちゃうと、アンドレへの気持ちを隠しながらある種反対のことを言うパラダインさんとか、弁護士としての自分と依頼人に恋する本音が見え隠れするあたり、演技がすんごく単純化されちゃう傾向。

まあもう一つ言うのなら、そもそも、パラダイン夫人の告白に驚きがないことが残念。つまりオチが弱いってやつ?
これはセルズニックのせい!!脚本が悪い。