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アイ・アム・レジェンドのEirainのレビュー・感想・評価

アイ・アム・レジェンド(2007年製作の映画)
2.0
原作は、リチャード・マシスンの同名小説。原作小説を読み終えたので、こちらの映画化作品を手に取ってみた。

舞台は、新種の病原体によって人類が絶滅に瀕している世界のニューヨーク。病原体の感染によって凶暴化した人々と野生の動物しかいないかつての世界の中心都市で、主人公のネヴィル(ウィル・スミス)は、愛犬のサムと共にワクチン開発をしながら孤独なサバイバル生活を送っていた――――。

・・・うーん、これは小説『アイ・アム・レジェンド』の映画化である必要があったのだろうか。原作小説自体、現在ではありふれた設定となっている「病原体によるクリーチャー化(ゾンビ等)」の元となった作品と言われており、この設定だけを踏襲するのであれば別にこの小説を基にする必要はない。

原作小説の映画化とするのであれば、原作小説固有の魅力を表現するべきではないだろうか。個人的に、この作品の魅力は「絶望的なまでの"孤独"」だと思っている。感染していない人はおろか、動物すらいない。そんな中で一匹の犬や感染していない一人の人間に出会った時の希望――――そして絶望。気が狂いそうになる程の"孤独"な環境に置かれた一人の男の物語、それが『アイ・アム・レジェンド』という作品なのだ。

そんな作品の映画化がこれ。"孤独"の絶望感が全くと言っていい程伝わってこない。凶暴化した人々や動物とのドンパチを見所にするような作品を作りたいのであれば、『アイ・アム・レジェンド』の映画化である必要は全くと言っていい程、ない。原作では深い意味を持つ"I am Legend."というタイトルの扱いは薄っぺらくてリスペクトを感じられず、「制作者は特にこの作品に思い入れがある訳ではなく、ただ既にあるプロットを利用したかっただけなんだな」、という感想すら出てきてしまう。

と、原作小説を読了した立場からの評価をしてみたが、映画単体でみてもイマイチ。クライマックスの凶暴化した人々とのやり取りだが、これがあまりにも唐突。この結末に至るための描写や話の流れがあれば、「ああこういうテーマだったんだな」と納得できるのだが、それすらない。結局、この映画で何がしたかったのか、何を伝えたかったのか。。。
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