陰謀論者X

ゾンビ/米国劇場公開版の陰謀論者Xのレビュー・感想・評価

ゾンビ/米国劇場公開版(1978年製作の映画)
5.0
小学生の時にテレビ放送されていたのを観て余りの恐怖による吐き気で途中で観るのを断念した本作が、生涯ベストムービーです😇

故ジョージ・A・ロメロが生み出した最高傑作だと個人的に思っているのがこちらの「米国上映版」です。長尺のディレクターズカット版、ダリオ・アルジェント監修版やそれをベースにゾンビ発生原因を説明する文章を冒頭に追加してグロシーンをストップモーションに加工した日本公開版がありますが、ゴブリンによる楽曲を多用せずライブラリーミュージックを全編に使用しているのが今作の特徴。尺的にも一番バランスが取れていると思います😇

ピッツバーグのCM制作会社の社長だったロメロが起死回生とばかりに作ったホラー映画「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」が当たり、約10年後にアルジェントの出資を得て製作された続編ですが、1969年に地元に出来た当時国内最大規模だったモンローヴィル・ショッピングモールを撮影のロケ地にしております。今はそこら中にショッピングモールがあるのでありがたみなどありませんが、70年代末に何でも揃うショッピングモールを舞台にしたことで大量消費社会への警告を描いております😇

「蘇った死者」によって混乱して自滅しつつある危険な都市部からヘリで逃亡しモールの最上階にある隠し部屋に立て篭もった生存者たちが知恵を絞り、館内を徘徊するゾンビを出し抜く快感と欲望の発露に観客は完全シンクロします。そしてモール館内を意味もなく徘徊するゾンビたちとのモールの支配権をかけた戦い。何とか館内のゾンビを一掃した後の静寂と虚脱。そしてやがて来る凶暴な略奪者たちとの無益で凄絶な戦いに繋がるテンポ感が実に素晴らしい😇

バージョン違いのアルジェント版はゴブリンサウンドが多用されているので印象がガラリと変わり「サバイバル・アクション・ホラー」の側面が強調されておりますが、どのバージョンも噛めば噛むほど味が出てくるスルメみたいな作品で、生ける死者の急増で滅びゆく文明社会の焦燥感と悲哀、人間の欲望と絶望と自滅をドキュメンタリー風味の神視点で描いた神作品です😇

生前の記憶によって徘徊する死人たちの哀れさ、そして「最後の敵は同じ人間」というその後のゾンビ映画の流れを確定させてしまった今作ですが「自分がこの世界に放り込まれたらどうするか?」といった想像力を掻き立ててくれるパワーの内包と、終末世界で浮き彫りになる人間の業を活写している点が評価の所以でしょうか。個人的には生涯ベスト作品ですね😇
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