マーくんパパ

華麗なる一族のマーくんパパのレビュー・感想・評価

華麗なる一族(1974年製作の映画)
4.0
当時観たよりは今観直した方が原作小説が示した先見性の凄さがよく分かる。金融業界と鉄鋼業界の再編を関西の万俵一族の閨閥経営、妻妾同居、親子の確執、政界癒着と絡めてダイナミックに描く社会劇大作。小説執筆開始が1970 年、銀行再編の萌芽は芽生えており第一銀行と日本勧業銀行が合併して第一勧業銀行ができたのは1971年、その後1973年に太陽銀行と神戸銀行が合併して太陽神戸銀行になったとはいえ、まだ都市銀行は13行あった。三菱・住友・富士・第一勧銀・三和・東海・協和・東京・埼玉・北海道拓殖・三井・太陽神戸・大和、この後就職活動してたから今でも誦じて言える。これが今では政府系りそな含めてメガバンク4行だけに収斂してしまった。生き残りの為、小が大を飲み込む合併を仕掛けた万俵大介執念の謀略も大蔵大臣曰く〝弱体銀行同士の合併では意味がない〟と次の合併先を官僚に促して終わる暗示性が現実となっている。頭取妾が家庭内に同居し婚礼話も全て仕切る暗躍ぶり、父親が誰かを巡る大介と長男鉄平の確執のドロドロぶりは〝華麗なる一族〟とは程遠い血塗られた血族模様。合併伏線工作、日銀と大蔵官僚の縄張り意識、政界を通じたスキャンダル揉み消し工作、与党と野党のもたれ合い、銀行内生え抜きと天下り頭取の確執etcと社会の断面を反映した見所は満載。小さなエピソードでも預金獲得至上命令を受けた現場の支店長が農家土地代金を欲しくて夜討ち朝駆け、田植えまで手伝わされた挙句婿養子になる他行に預金取られ心労で倒れる銀行員あるあると微に入り細に入りしっかり描写している。1番ショックな先見性は劇中長男鉄平が自社溶鉱炉建設の夢破れ山中で猟銃自殺するシーン、この4年後に官僚役で出ていた田宮二郎がそっくりその姿勢で自殺してしまったこと。