Sari

彼女たちの舞台のSariのネタバレレビュー・内容・結末

彼女たちの舞台(1988年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

厳しい教えで有名な女流作家の演劇学校に通う4人の若い女性、(アンナ、クロード、ジョイス、ルシア)はパリ郊外の屋敷で一緒に暮らしている。
彼女たちと共に暮らしていたセシルは恋人の元に移るため屋敷を出たが、その恋人が実は裏社会の人間であった。一人の見知らぬ男(警官)が捜査のため屋敷の周りを彷徨き、4人の女性が巻き込まれていく。

ボーイッシュなクロードは、警官が気になり恋に落ちてしまう。アンナは3年半行方不明の妹を探しており、実名と異なる妹の名アンナを名乗っていた。ペドロ・コスタ監督のミューズであるポルトガル女優イネス・デ・メディロスが屋敷に隠された鍵を巡り、霊感のあるミステリアスなキャラクター、ルシアを演じる。というような各キャラクターを取り巻く事情も描かれていく。
主要人物ではないが、演劇クラスの一員にキェシロフスキのミューズ、イレーヌ・ジャコブも出演。

冒頭、舞台に立つアンナ、部屋に入ってきたセシルの会話かと思えば、既に演劇リハーサルに突入しているのが面白い。
演劇のリハーサル風景(虚構)と屋敷での時間(現実)とが往来して映し出されていく混沌とした時間のなかで、彼女たちの重複する仕草や台詞のニュアンスの差が徐々に異なった意味性を帯びてくるのが心地良い。

女流作家に扮するビュル・オジエが、客席から彼女たちの稽古の様子を眺め、常にダメ出しをし続ける。モノトーンのファッションが格好良いオジエ、年齢を重ねた感は否めないが、相変わらず声はキュート。
そんな彼女にまつわる事実が最後に明らかとなるも、ご都合主義的に演劇の完成に導くことはせず、そのまま放り投げたようなラストがまた良い。

警官トマは、『ギターは聞こえない』『トリコロール/青の愛』の亡きブノワ・レジャン。

撮影はキャロリーヌ・シャンプティエ。
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