ダンクシー

リリイ・シュシュのすべてのダンクシーのレビュー・感想・評価

リリイ・シュシュのすべて(2001年製作の映画)
3.7
« 滅亡したんですよ。人類は。いま僕らをとりまく世界は、『マトリックス(笑)』» «投稿者:青猫»
«だとしたら、人類最期の日は、1999年、9月1日。新学期。あの日を境に、世界は、灰色になった。» «投稿者:フィリア»

岩井俊二らしい。らしいよ。らしすぎる。
いじめ、少年犯罪、レイプ、援交、自殺、殺人、描かれてる内容がキツすぎる。あまりにも胸糞悪い。悪すぎる。陰鬱すぎる。ダークとかの次元じゃない。
憂鬱、衝動、苦悩、葛藤。14歳というまだ若くて多感な思春期の少年少女たちの灰色時代の生々しい出来事を、リリィ・シュシュのファンサイトの書き込みを幾度も挟みながら描いた、残酷青春群像映画である。
中学生の負の痛みが生々しいほどリアルに描かれていた。不条理な事にまみれたこの世界、まだ13・14そこらの若者にとっては、絶え間ない絶望であり地獄だろう。。あまりにも救いがない残酷な世界とストーリーを、美しい自然の田園などの綺麗な映像で映し出していた。これぞ岩井俊二。だからそのギャップでかなり疲れたなー。
青春の闇・現代にも残る数々の問題を隠すことなく繊細に描いてみせた衝撃作。
そんな映像とストーリーに、ドビュッシーの神秘的で美しい曲が流れ続ける。だから心を取り残されたようだし、情緒的だけど苦しいというか、凄く複雑な気持ちになる。だからこんな最悪な世界観に、否応なしに引き込まれてしまうというか、自分も住人だと錯覚してしまう。
これが岩井俊二のセンスというか、術ですね。

やっぱ美しい映像にどうしても目を惹かれてしまう。とてもノスタルジックで、繊細だ。透き通った空、空気、草花、水。観ていると感傷に浸る、穏やかな映像だ。それらに対して全て絶望であり美しくもある、矛盾した感情を抱いてしまった。
そこにリリイ・シュシュという歌手の歌が組み込まれる。この腐りきって汚れた恐ろしき世界で、リリィ・シュシュだけは真逆の汚れなき神秘的存在として描かれる。
汚れたモノと純粋なモノ、この対となる2つの要素が、"二項対立"になって完成したのがリリィ・シュシュのすべてだ。

結構ぶっ刺さったし、ちゃんとサブカル映画で面白かった。多感だった頃の自分(笑)が観ていたら、どうなっていたことやら。
けど、また観たいかと言われたら、もう二度と観たくないかも。
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