Masato

リリイ・シュシュのすべてのMasatoのレビュー・感想・評価

リリイ・シュシュのすべて(2001年製作の映画)
4.3

鬱映画特集(一人鬱映画祭)

鬱ランクC

久々の鬱映画祭。

日本じゃないと描けない美しくも陰鬱な映画。岩井俊二しか描けない透明感。

この映画まで酷いことは経験してはいないが、非常によく分かる。吐き出せない苦しみ。逃げるしかない苦しみ。抑圧されて自分を制御できない苦しみ。美しい田園風景や沖縄の自然とのコントラストがよく効いていた。そのおかげで、ある種のノスタルジーを感じさせられる。美しさと苦々しさが混在する過去の記憶。

なんというか、ロジカルには処理できない映画。自分の過去と重ね合わせて感じる映画。私も、中高時代はDir en greyを死ぬほど聞いていたので、音楽に気色悪い美徳を求めるのはよく分かる。20歳という若輩者ながら、もう現在になるとこの映画の中学生は何をしたいのだろうかと分からなくなっている。でも、なぜかシンパシーがある。痛々しいけど、儚いなあ。

仰々しい演出はあまりなく、ネットのサイケな演出がある程度。ブレアウィッチを彷彿とするPOVの沖縄旅行がリアリティがあって素晴らしかった。瑞々しい美しさ。

日本で成長した大人たちの忘れてしまった心を掘り起こしてぶっ刺しまくる、かなりキツイ映画だった。この映画の世界に戻りたいが、戻りたくない。分かるかなこの気持ち。

まぁ、とにかく見て感じてくれ。

蒼井優この頃から芸達者でよかったなあ。忍成修吾もよかった。まさかの高橋一生が出ていた。市原隼人の演技とキャラともに無気力感は素晴らしかった。棒演技にも見えなくはないが、そんなところとまた一味ある。
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