垂直落下式サミング

真夜中のカーボーイの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

真夜中のカーボーイ(1969年製作の映画)
4.0
それなりの野心をもって広い世界に飛び込んだのに、リア充になりきれず、不良にもなりきれず、オタクにもなりきれず、代わりに何でいつも一緒にいるのかよくわからない変な友達ができた経験のある人は多いと思う。そんな凡夫たちにおくる切なさが後を引くブロマンスだ。
ダスティン・ホフマンとジョン・ヴォイドが、アメリカンドリームを夢見ながら都会の夜のなかに埋れていく男達の孤独な生き様を見事に映し出している。
実家やなんかのあれやこれやが嫌になったり、女に酷いフラれかたをしたりして、田舎から逃げるように町場へ出てきた人には、共感できるものがあるのではないかと思う。口では「いい仕事をみつける」とか「ビッグになるんだ」とか言うが、人が住み慣れた土地を離れたがる理由は「とかくその場にいたくない」のであって動機は後付けであることが多い。
物語は無慈悲な結末をむかえるのだが、堅気でない生き方をしていたらこうなっても仕方がないだろうと、主人公たちを責めきれない奥深い何かが本作にはあった。
必死に虚勢をはって夢に向かって背のびするのも強さならば、現実に戻って踏ん張るのもひとつの強さだ。
現実は夢見たほど容易くない。だからこそ、深い喜びが一際輝くのだろう。