ディグ

真夜中のカーボーイのディグのレビュー・感想・評価

真夜中のカーボーイ(1969年製作の映画)
5.0
アメリカン・ニューシネマの名作にして、個人的に人生で観た中で最高傑作。マイベストムービーを選ぶなら、絶対に外せない一本。
もう全てが愛おしく、全てが悲しく、全てが可笑しい。

1960年代まで【ヘイズコード】という
ハリウッド映画界に巣食っていた、自主規制。
その規制の中で、映画はハッピーエンドしか許されず、セックス、
ドラッグ、バイオレンス描写が禁止されていた時代がありました。
アメリカン・ニューシネマは、そんな規制をぶっ壊す作品たち。
この「真夜中のカーボーイ」は、そんな中で生まれた
最高傑作で、人生はハッピーな事ばかりじゃない!と
教えてくれる映画です。

主演のジョン・ボイトは、アンジェリーナ・ジョリーの
実の父親ですが、この映画公開当時、
ハリウッドでモテモテの彼は、娘アンジーを捨てて家を出て行き
その後、アンジー主演の映画「トゥームレイダー」で共演するまで
娘から嫌われていました。

そんなジョン・ボイトの実人生と、この作品の役柄が重なって見え
どこまでが現実で、どこからが映画なのか、
わからなくなるほどのハマリ役。
助演のダスティン・ホフマンはこの頃、
主演級のスターだったのに、なんとホームレスの役を演じています。

物語はこの二人を中心に描かれます。
田舎から出てきた若者のジョン・ボイトと都会でひっそり暮らす
ホームレスのダスティン・ホフマン。
二人は社会から拒絶され、都会の人々の冷たい視線を気にしながら
廃墟ビルの中で生活しています。

カメラワークも最高で、
それまでカチカチ、コテコテの固定スタジオ撮影ばかりだった
カメラワークは自由に解放され、
ハンディでニューヨークの町並みを臨場感たっぷりに
撮影しています。そして編集も素晴らしい。
彷徨う主人公の後ろ姿を、同ポジで昼、夜、昼、夜と
カットバックするシーンにしびれます。

さらには音楽も素晴らしく、
メインテーマの音楽は、ハーモニカの名手が
切なく演奏しています。いつまでも耳に残って離れません。
耳に残る映画音楽って、記憶にも残りますよね!

この映画のテーマは「居場所のない人」
職場や、プライベートで、
少しでも「自分に居場所がない」と感じた経験があるなら
きっと共感できると思います。

悲しくて切ないエンディングが待っていますが
きっと「観てよかった」と思える作品です。
古臭いと思わず、ご覧にってはいかがでしょうか?
ある意味、ハッピーエンドでお金儲け主義の今の映画の方が
よっぽど「古臭い」ですから。
ディグ

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