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死神の谷/死滅の谷のAOIのネタバレレビュー・内容・結末

死神の谷/死滅の谷(1921年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

無声映画活弁上映会、2本立ての2本め。

作品自体に音声がないからこそ、構図の美しさで勝負しているシーンが多々あった。
モノクロを活かして、逆光がナイフのシルエットになっているシーンとか。伝わるかなあ。
ストーリーの舞台も、蝋燭の部屋→バグダッド→ベネツィア→中国と、絵面の美しさを追求した構成。
美術館に来たみたいな気分になる一本でした。

あらすじはかなり寓話性があり、良い意味で単純明快で、だからこそ前述の画の美しさやセリフまわしに意識が向きやすい。

寿命の蝋燭の話、なんか見たことあるな……と思ってググったら日本昔ばなしの「死神」という回でした。モチーフは同じだけどストーリーが全然違った。

澤登翠さんという活弁士の方が声を入れてくれていましたが、登場人物一人ひとりについて声色も喋り方も変えてらっしゃって、アニメのアフレコを見ているような贅沢な時間でした。

100年前の映画、さぞや考古学的価値があるんだろうな、だからたぶん面白くはないんだろうな、みたいなことを思って観てすみませんでした。普通に面白いし好きでした。映画っていうか舞台に近い印象。

この前観たトリュフォーの『あこがれ』、全編ナレーションで珍しいつくりだなと思っていたんですが、もしかしたらトリュフォーは、無声映画のこの感じをイメージしてあえて効果音もセリフも最低限にしていたのかもしれない。
そうかもしれないっすよね、って映画好きの方にお話したら、
「トリュフォーは無声映画の時代よりも後の人だけど、映画評論家としての顔も持っていたから、もしかしたらそうなのかもしれないね」
と仰っていました。へえ。

この作品について調べると、「フリッツラング作品だとメトロポリスがすごい」みたいな話がやたら出てくる。なるほど、あらすじからもう面白そう。観てみたいです。
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