イッソン

クラムのイッソンのレビュー・感想・評価

クラム(1994年製作の映画)
4.0
クラムの凄さがよくわかる映画。

家族が狂っているのは父親が悪かったのか母親が悪かったのか、時代か。いじめっ子のスカッチが悪かったのか。

兄貴も弟も狂気から逃れることはできない。クラムだけが狂気を飼い慣らし偉大なアンダーグランドの漫画家として認められている。

現代美術の大竹伸朗さんもクラムを認めていた。

というわけでその才能はお墨付きなのだが、まさか兄貴や弟がここまでとは思っておらず、この映画を初めて観た時はビックリし、気持ち悪くもなった。

あとで考えてみると、クラムには姉妹も2人いる。映画には出てこない。出演を拒否したのではないだろうか。仕方のないことである。

クラムの弾くピアノがとても憂鬱で悲しい。この曲はラグタイムの作曲家ジョセフ・ラムのラグタイム・ナイチンゲールという曲。
クラムは何枚かレコードも出している。監督のツワイゴフはバンド仲間だ。
音楽活動もしていたクラム。そもそもジャニス・ジョップリンのアルバム「チープ・スリル」のジャケットで有名になったのだ。でもあまり嬉しそうではない。

とにかく描いてる量がすごい。クラムは常に描いてる。日本の漫画家だと量産しなくてはならず常に追い立てられスケッチとかしてるヒマがないと思う。
クラムはいつもスケッチブックとペンを持ち、興味のおもむくままに下書きなしにいきなり書く。
まあ、お気に入りの対象はお尻の大きな女性だったりするんだけど、その趣味を隠すどころかむしろ全てをさらけ出している。
妄想の地盤がしっかり根をはっているから、強い。ビジネスで描いているのではなく、自分のマグマが爆発するように描いている。こういった人は自殺などしない。

ブコウスキーやカフカの挿絵もやっているところを考えるとまともなプロのイラストレーターでもある。つまりクラムはしぶといアーティストなのだ。