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スラムドッグ$ミリオネアのあんずのレビュー・感想・評価

スラムドッグ$ミリオネア(2008年製作の映画)
4.3
WOWOWのアカデミー賞特集2021のラインナップに入っていたので、録画鑑賞。過去に鑑賞した時、強い衝撃を受けたのを覚えていたが、かなり時を経て観てもやはり衝撃を受けるし、物語として目の離せない展開で引き込まれた。

今年の受賞最有力と言われる『ノマドランド』と自分の知らない世界で生きる人々を見せてくれるということ、そこに生きる人々は好んでそこに生きているのではなく、そこでしか生きられない運命や事情があり、それを運命だからと見過ごしてしまう社会はおかしいだろうということを示唆している点で似ていると思った。でも、この物語の主人公ジャマールは、スラム街で生きる運命だったからこそ、クイズ番組(日本版司会者のみのもんたを何度も思い出した)で活躍し、運命を切り開くことが出来たのだ。

スラム街の少年少女たちの過酷な運命に負けない逞しさ、目の輝き、生きるために犯罪に手を染めるもののピュアな心を失わない所を見ていると、自然に応援したくなるし、ジャマールの快挙は閉塞的な毎日を送る私たちにも夢を見させてくれる。それは単に大金を得られるかもしれないという夢だけではなく、人間としての尊厳や愛する人を取り戻すという崇高な夢だ。そして、愛(しかも初恋)こそ生きる原動力という決してお金では買えないモノの尊さをジャマールに説得力を持って改めて教わる。

ある少年がジャマールは運が良く、自分はそうでなかっただけ……というシーンがすごく心に残った。実際は、この少年のように映画の主役にはなれないような過酷すぎる運命の子どもたちが沢山いるのだろう。この点も『ノマドランド』に出演していたノマドの人たちと重なって見えた。
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