半兵衛

これがロシヤだ/カメラを持った男の半兵衛のレビュー・感想・評価

4.0
ソ連という国が朝の到来と同時に人間、機械、マネキンと様々な物質が活動を開始してやがてそれが大きな躍動する国家へと結び付いていく様を、ストーリーを使用せずモンタージュや多重露光、スローモーション、早回しなど多彩なテクニックで形成する演出があまりにも過剰で目まぐるしくて映像による暴力を体験しているような感覚に。それでもこの実験的な作品が鼻につかないのは、随所に登場するカメラを持つスタッフが嬉々として撮影していたり編集する女性が魔法でもかけるように写真のように動かないフィルムから躍動感のある映像へと変化する様子を通して「映画を作る楽しさ」を純粋に表現しているから。そりゃ実験と映画としての面白さを両立していたらゴダールだって憧れますわな。

女性がストッキングを履いたり着替える様子を正面から捉えて、不謹慎な行為でも撮ることで成立する映画というものの特権や女体がうごめくエロチズムの楽しさを遠慮なく表現しているのも清々しくて楽しい。

あと随所でお酒を飲んでわいわい騒ぐ人たちを活気よく描いているけれど、当時禁酒法で大っぴらに飲めなかったアメリカへの当て付けだったのだろうか。
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