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十九歳の地図のNARUのレビュー・感想・評価

十九歳の地図(1979年製作の映画)
4.3
尾崎豊に大きな影響を与えた中上健次の小説『十九歳の地図』の映画版。

ログラインは、
新聞配達員の青年が、不満のある家庭に嫌がらせ電話をかけていく話。

客観的に観ると、本作の主人公は幼稚だ。
自作の地図を広げ、不満がある家庭に×印をつけて嫌がらせをしていく。
被害者も気の毒だ。許される行為ではない。

だが、年齢や性別や出自から来る焦燥の行き場が彼にとっての地図であり、電話だったことはわかる。

尾崎豊の「盗んだバイク」同様に、「行動には移さないが、気持ちとしてはわかる」と共感する人もいれば、嫌悪する人も多い思う。
自分は前者だった。

出自や環境に納得できない時期を経験した人間には響く作品だと思う。


原作に漂う空気感が見事に再現された実写化で、
原作では間接的にしか登場しない「マリア」が登場し、テーマがより際立っている点も良い。


余談だが、本作は「爆弾小説」の系譜に分類される。
梶井喜次郎の『檸檬』を引き継ぎ、村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』にバトンを繋いでいる。
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