すえ

十九歳の地図のすえのレビュー・感想・評価

十九歳の地図(1979年製作の映画)
4.3
記録

【傲慢】

童貞浪人生絶対殺すマンと化している本作。巷で持て囃される眩しい青春映画の裏に、本物の青春を描いた映画があるのだ。ムワッとした湿度が堪らない、何も持たないクセして高慢ちきな学生を見てこそばゆさを感じてしまう。

書くことが主題化されていることや、新聞配達という行為が幾度となく反復されること、また(芸はないが)鏡を使った主人公の二面性の表出が良かった。

原作未読なので何処までが引用かは分からないが、台詞が素晴らしい。果てしなく傲慢で、汚らしく真っ直ぐで痛い。台詞にも若者の向かう場所のないエネルギーが在る。

捌け口のないエネルギーは上手く昇華できず、地図の上の記号(バツ印)へと変わり、そして脅迫電話へと変換される。それは実際に行動できるはずもなく自慰行為と何ら変わりないが、鬱屈した感情は歪んだ行為でしか発散できない。

終盤の、脅迫電話からガスタンクへの画面の滑らかな移行、そして全てが死んだような不在の街、この一連のシークェンスは中々良かった。

自意識過剰な学生は、自分が世界で一番不幸だと思っていて、また絶望を見てきたと考えている。死に方を選べない、死ねない女を見てもきっとそれは変わらない。必死で生きているのはどちらなのだろうか。

「傲慢だよ、最低だよ、バケモンだよ!」

2025,5本目 1/11 AmazonPrime
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