松井の天井直撃ホームラン

太陽の墓場の松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

太陽の墓場(1960年製作の映画)
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☆☆☆★★★

初見 簡単に。

大島渚の第3回監督作品。

全編でロケされ描かれる、大阪西成界隈の映像資料がとにかく貴重。

この第3回目のメガホンで、既に後の大島組常連俳優が揃い踏みをしており。その1人1人の個性の強さが早くも最大限に発揮されていた。
驚いたのは北林谷栄さんの《大阪のおばちゃん》役。この人のおばさん役は始めて見たかも知れない。

話自体は2つのヤクザ組織に振り回される(おそらく)ルンペル達を中心とした話で。正直に言うと、前半から中盤にかけての、人物の出し入れであったり。話の纏め方だったりが、少々いい加減な感もあったのだが、、、
そのルンペル達(名優のオンパレード)の引き出しの多い演技。時代を背景とした戦後のドサクサ感満載な雰囲気は、後半に連れてグイグイと惹きつけられて行き、そのカメラアングルと相まって最後の20分はスクリーンから目が離せなくなって行った。


大島渚の演出はデビュー作の『愛と希望の街』が、とにかく純粋性が際立つ内容だったの対して。この本編では、ラスト間近でのごちゃごちゃとした猥雑さの中に有りながらも、後の代表作と言える『日本の夜と霧』や『絞死刑』での観念性・退廃性に通じる一面をそこはかとなく漂わせていた気がした。

2020年9月3日 シネマブルースタジオ