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犬神家の一族のsyuheiのレビュー・感想・評価

犬神家の一族(2006年製作の映画)
3.5
2006年の市川崑監督作品。1976年版の同監督、同主演リメイク。

戦後まもなくのころ、信州の製薬企業の大富豪・犬神佐兵衛が亡くなり遺言状が公開された。莫大な財産をめぐるその内容は犬神家の人々を互いに憎ませ殺意をかきたてる恐るべきものだった。相談のため名探偵・金田一耕助を訪ねた弁護士の助手も謎の毒殺を遂げ… 恐るべき連続殺人事件の幕が上がる!

不気味な佐清マスクや湖から突き出た2本足などネットミームとなった横溝正史の同名小説、2度目の映画化。名作とされる1976年版と同じ市川崑監督がメガホンをとったほか、金田一耕助を石坂浩二、等々力警部を加藤武など、キャストも1976年版を踏襲、さらには脚本やセリフもほとんど同じという徹底ぶり。

画面比率や映像クオリティなどは確かに向上しているものの、失われたものも多い。1976年版のザラつきのある画面はきれいとは言えないものの戦後すぐの日本を描く上で効果的だった。また今作では那須ホテルなど多くがセットで、皮肉なことにカメラが良くなったことですぐにセットとわかってしまう。

最も悲しむべきは石坂浩二と加藤武の衰えぶりで、76年版では35歳だった石坂は当時65歳、47歳だった加藤はなんと77歳だ。特に加藤は声の張りが大きく失われており、誰もが老化することは仕方がないとは言え、76年版を何十回も観ているとどうしてもシーンごとに比較してしまう。この9年後に他界された。

劇伴は76年版の大野雄二によるテーマ曲がアレンジされ新たに演奏・録音されたもの。ラストシーンから鳴り始めるこれがかなり良くて、本編エンディングはちょっと変だけどエンドクレジットまで余韻に浸れる。市川崑監督は2008年に亡くなったので新しい技術で最後にもう一度という感じだったのかも。

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