カイ

仮面/ペルソナのカイのネタバレレビュー・内容・結末

仮面/ペルソナ(1967年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

モノクロだからこそ映える、照明を効果的に使った陰影の表現が素晴らしい。「自分」の定義の揺らぎ。話さない女優エリザベートと、その看護師アルマが避暑地で療養するが、徐々に二人の境界は融解し、曖昧になるまで溶け合う。タイトルが示す様に、誰もが意識的に、あるいは無意識的に問わず数多の仮面を秘めている。心の底から本心だけを曝け出していれば人は生きていられない。他者がいるからその比較に一喜一憂したり、その一致に安心したりする。自分は唯一であると誇りながら、同時に他人と離れすぎることには臆病になる。エリザベートは「話さない」ことで嘘から逃れようとするが、結局「書く」という行為によって自身が漏出する。エリザベートからすればアルマは自分のトラウマを知り、嘘を暴く存在として、アルマからすればエリザベートは忌避する未来そのものとして、最終的には敵対者となる。しかし、その境は崩れ去る。根っこの部分、仮面の奥の素顔が暴かれる時、二人の本質は違わない。視点の固定が、「自己」とは「他者から見た自分」の集積でしかないことを演出する。エリザベートを誰よりも理解しているのはアルマであり、アルマを誰よりも理解しているのはエリザベートであるから、だから二人は同一に重なる。アイデンティティーを問い直す一作
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