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宇宙戦争のEikeのレビュー・感想・評価

宇宙戦争(2005年製作の映画)
3.1
2005年公開のSF大作。
いわゆるジャンル系のB級映画に対して莫大な制作費と最新のテクノロジーを投入して「大作」に仕立て上げるのが現在のアメリカ映画のスタイル。
それを可能にしたのはもちろんCGを含めたデジタル技術の本格投入でしょう。
しかしデジタルの特性として技術の移植の容易さがある訳で新たな描写はすぐに他の作品に転用される事になる訳で結果的に多くの作品がどんぐりの背比べになってしまっている状況は否めないと思います。

簡単に言えばどの作品を見ても同じような見せ場のオンパレード(現在のアメコミ作品の多くを見れば明らかでしょう)。
そうなると本来なら原点回帰して「お話」や「人物描写」に重点を置いた作品が増えてもらいたいところであるのだが中々そうもいかないようで…

本作はスピルバーグとトム・クルーズが2002年の「マイノリティ・リポート」以来の再タッグを組んだ期待作でありました。
前半は結構、エイリアンの地球侵略における極悪非道ぶりを淡々と描いていてインパクトがあるのですが後半以降は物語としてほとんど意味を成さなくなりますね(あの地下室でのシーン以後)。

結構良くできてると思った前半のショッキングシーンもふと考えてみればあまりに露骨な2001年の911テロの印象の安易な利用が目に付いて、そのアプローチに対しては疑問というより少々不快感を覚えてしまいました。
空中から舞い落ちる遺品や行方不明者を探す無数のビラなどにはWTCの映像を思い浮かべるなと言う方が無理でしょう。
実際にカメラワークなどでも敢えて人の視点の高さからの描写に絞ることで「臨場感」を醸し出す等のテクニックは911の一般市民が撮影したフッテージの印象を「お手本」にしていたそうです。

このスケールのお話にしては結末が単純すぎるとの批判もあるようですがこれはH.G.ウェルズの原作通りですから仕方ないでしょうね。

スピルバーグのSF作品にしては妙にぎこちなさを感じたのですがこれほどの「大作」であった割には脚本も中々決定されず、撮影が実際に開始されたのは公開の7か月前だったそうです。
それと言うのも本作は当初の予定では2007年公開に向けて準備が進んでいたプロジェクトであったらしいのですが2004年にスピルバーグ/クルーズ氏の双方のスケジュールに「空き」が出たためにスタジオ側が急遽前倒しで進めたという事情があったそうです。
スピルバーグ監督は元々早撮りなので72日間でクランクアップしたそうですが、全編に渡る特殊効果の方はそう簡単では無く、かなりギリギリの状態だった模様で、それもちょっと作品の印象がピリッとしない原因なのかもしれませんね。
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