ハレルヤ

フェイシズのハレルヤのレビュー・感想・評価

フェイシズ(1968年製作の映画)
3.6
アメリカの中流階級の夫婦であるリチャードとマリア。夫婦間は冷えきっていて離婚間近の2人の36時間を描いた物語。

とにかくタイトルの通り、顔に尽きる一作。登場人物たちの顔がひたすらクローズアップされていて、その時その時の感情が伝わりやすい形になっています。

それも手持ちカメラ中心のカメラワークの効果が大きく、更にドキュメンタリーのような作風も追い風。一般家庭の夫婦確執をそのまま撮っているようでリアリティーの強い仕上がり。

また監督のジョン・カサヴェテスが当時資金難で自宅を抵当に製作。その自宅で撮影を行い、低予算を逆手に取って少しの演出とキャストの演技オンリーで撮りきったのも本作の大きなポイントでしょう。

夫婦お互い別の人間と関係を持つリチャードとマリア。2人共互いに愛情を失っていて、それを埋めるかのように他の人間に走ってしまう。そして思い知る自分の今の立ち位置。2人と同様に見ている側にも切なさや悲しみ、虚無感などが押し寄せてきます。

夫婦を演じた主演の2人も良い演技でしたが、本作の魅力はリチャードの相手で高級娼婦のジャニーンを演じたジーナ・ローランズでしょう。そこまで出番がガッツリある訳でもないのに、あの存在感は随一。監督の実際の奥さんでしたが、その後も作品の常連になるのも納得の名演でした。

ただ娯楽要素は皆無に等しいので、映画的な面白さを求める人には合わないでしょう。2時間を越える時間も割と長いなと思ったのも事実です。
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