のわ

M/OTHERののわのレビュー・感想・評価

M/OTHER(1999年製作の映画)
3.6
【 コトバの曖昧さ。】

文字通り「母」が切り離されることによって生じた「他者」たちでしかない関係性の3人の物語。

枠組みを持たない関係の中で人と人との互いのキョリ感の相違、思考の隔たり、対話の困難さ・不甲斐なさが見事に浮き彫りになっている。
全ては即興的な演出の成せる技。

「状況」だけが確固として存在し、その上に浮遊する個の意志が点在。その点を結びつけるのは更に不安定な「コトバ」。重要なのは「コトバ」を発する個の感情や意志であり、それ自体に価値はナイということ。

如何に今日の映画の多くにおいて物語を進めるがために登場人物が一束(いっしょくた)でしゃべらされているか、展開の道具として「コトバ」がさも絶対的なものとして頼られ過ぎているかということに気づかされる。
物語、ドラマというものの形成の再考を問う秀作。

難しいことではなく、「アキ」という女性がその日常を見事に生きている、それだけの事。それ故に、の事。
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