Epinefrina

M/OTHERのEpinefrinaのレビュー・感想・評価

M/OTHER(1999年製作の映画)
4.0
脚本がなく、監督と役者の綿密なディスカッションの下に作成された構成台本があるのみの作品

バツイチ男と30オーバー女性の緩い同棲生活に起きたスクランブルな出来事を映し出した作品で、聞き返し、言い淀み、言葉被り、長い間、婉曲的なセリフ、結論までなかなか行かない会話などが通常の映画からは考えられないほど多いので非常にリアリティーが強く、その事がこの映画の特異性を際立たせている

三浦友和の安定感のある演技もさることながら、この映画は渡辺真起子の映画と呼んでも差し支えない位、渡辺真起子が素晴らしかった

前妻との子供と生活するのなんて嫌だけど男が好きだからこそ嫌とは言えない。でも、進んで同意もしていないニュアンスのセリフ・演技
男の意識が子供・奥さんに向かい蔑ろにされるかも知れない恐怖感の表現
特別結婚する気もなかったけど、子供に再婚を否定されることによって生まれる子供に対する嫌悪感、男に対する嫌悪感・独占欲などどす黒い感情と、そのどす黒い感情を抱いてしまった自分に対する嫌悪感の表し方
友達との会話の素晴らしく一般的な女子トークのテンポ・空気感
何に何で怒っているのか分からない男に対する振る舞い方
etc
とにかく全てがリアルで演技っぽさが一切なく素晴らしかった

ただ、マイナスポイントとしては、
・脚本のあり方上仕方がないが、めちゃくちゃうまくいったシーンとそこそこのシーンの落差が結構ある
・3人の関係の不協和音具合を表現するためだろうが、場面が切り替わる度にバイオリンをわざと歪ませて鳴らすという手法を毎回使用していたが、シーンが切り替わる度に毎度不快な音を聞くことになり、非常に不快だった
・何も喋らないシーンが多く、それ自体は一つの表現方法として素晴らしいため肯定されるべきだが、その表現を活かすためにももう少し全体を削って最低でも100分前後位に収めるべきだったと思う
これと行って何かが起こる作品ではないのに147分という長編にしてしまうのは役者の演技が素晴らしく、それを活かした演出も素晴らしかったとしても長すぎ
Epinefrina

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