田舎の薄情な主人に買われて妻となった女 菊豆。彼女と一家の数奇な運命を描く、チャン・イーモウの第2長編を、初期3作の最後に劇場観賞。
ストーリーは「オイディプス王」の変奏曲であると同時に、もちろん旧弊な家父長制への批判を込めた作品でもある。
本作の「紅」は、一家が営むの染物工場の染料の色。紅だけでなく透明な青の染料も印象的。ただ、禍々しい事件はみな紅で起こる。
次作『紅夢』で主要なモチーフとなる中国瓦屋根の家並みが本作でも登場。工場内の構造を生かした立体的な構図も見どころの一つで、『紅夢』でみせるキレキレの映像美の片鱗がうかがえる。
初期3作品の中では最も物語性が強く、ゆえに一番見易い作品になっていると思う。