Keigo

去年マリエンバートでのKeigoのレビュー・感想・評価

去年マリエンバートで(1961年製作の映画)
4.8
…YABAI。好きすぎる。
内容に関してほとんど何も理解出来てないに等しいと言える感触なのに、だ。
それはなぜか。
さて、何から書けばいいだろう…。


とにかく、めちゃくちゃ難しい。
ゆっくりと映し出されるバロック調のホテルの壁や天井や廊下と、文学的な台詞のナレーションが表象する意味を理解しようと冒頭から最大出力の集中力を注ぐものの、あまりの難解さに開始数分で脳みそが焼け焦げそうになる。これではとても最後までもたない。一度で全てを理解しようとするのは無謀だと早々に諦めたのが功を奏したのか、ただ目の前のショットに注目し始めると、建物の外観や内装、骨董品や調度品、人物の服装や表情や動きに至るまであらゆるものが、一切の偶然が入り込む余地が無いほどに計算し尽くされたバランスの上に理路整然と配置されていて、驚くほど洗練されていることに気付く。そんなショットのとめどない連続に興奮を覚える一方で、カットとカットは無秩序にも思えるぐらい複雑に繋げられていて、一向に理解の糸口を掴ませてはもらえない。華美であるはずの建築物も風景も人物も、無機質で不穏で冷たい雰囲気を積み上げていく一方だ。そんな状態でふと気が付くと、もう戻れなくなっている。あのホテルの中から、この作品の中から、いつの間にか出られなくなっている。


…うん。自分で書いてみても、やっぱりよく分からん。でもこんなに分からないのにこんなに好きだと思えたことは、映画をストーリーや感情に偏って観てしまいがちな自分にとっては、喜ばしいことなのかもしれない。
Keigo

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