「さよなら子供たち」
第44回ヴェネチア国際映画祭にて金獅子賞を受賞した「死刑台のエレベーター」のルイ・マルの半自伝的作品。ナチス占領下におけるフランスのカトリック系の寄宿学校で過ごす少年たちを描いた作品。
基本はナチス占領下のフランスにおける子供たちの学校での日常ストーリーで、終盤まで特に派手な出来事が起きるわけではない。
戦争映画でありながら、戦闘シーンなどの描写があるわけではなく、あくまでも疎開先での「日常」を描いているところが特徴的である。
しかし、そんな日常のシーンの中にも寄宿学校やレストランでユダヤ人が差別を受ける描写が挿入されており、大人だけでなく子供も戦争の被害者であるというメッセージを孕んだ紛れもない反戦映画である。
「死刑台のエレベーター」は撮影が非常に凝っていた印象だが、本作はそのような技術的な側面を感じることはなかった。しかし、それによって子供たちの目線から見た「戦争」がより鮮明に生々しく見えたので、ルイ・マルはそのような意図で本作を撮影したのではないかと思った。
本作はフランス版「窓ぎわのトットちゃん」と言っても過言ではない。戦争が子供たちから何を奪い、苦しめたのか非常に考えさせられる作品である。