daiyuuki

ありふれた事件のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

ありふれた事件(1992年製作の映画)
4.3
強盗を生業とする主人公のベン(ブノワ)は、カネを貯めていそうな老人や、カネの匂いのする家にあたりをつけて強盗をはたらく殺人鬼。
月初めには年金目当てに郵便局員を襲い、血にまみれた手で死体処理の方法を語り、詩をよむ。
そんな強盗殺人犯であるベンの様子をフィルムに収めて映画の完成に漕ぎつけようとする3人のクルー。
クルー達はベンの、こうした「ありふれた事件」に触れ、次第にその感覚を麻痺させていく。
マスコミと殺人鬼は共犯関係にある。
視聴者の「犯罪の現場を覗き見したい」欲求を叶えるためにどぎつい報道をして、殺人鬼は目立とうとますます過激な犯行に出る。
「死体を沈めるには体重の倍の石がいる」「月初めには年寄りの年金を運ぶ郵便局員を襲うんだ」など自らの犯罪哲学をドヤ顔で語ったかと思えば、打ち上げで詩を暗唱したり政治や芸術について熱く語るベンにいつしか魅了され、ベンの犯罪の共犯関係になっていくドキュメンタリー映画のスタッフの罪悪感の無さは、残虐でサイコパスなベンと同じように恐ろしい。
daiyuuki

daiyuuki