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春のソナタのtkykのレビュー・感想・評価

春のソナタ(1989年製作の映画)
3.9
どのシーンも空間の映し方が印象的だった。どのシーンも均整のとれた構図になっており、絵画のような美しさを堪能できた。特に室内での奥行きは印象的だった。本作では画面内に2つの部屋とそれらを隔てるドアが収まっている場面が多い。そういった場面でカメラは固定され、移動する人物をフィックスで捉えているので、カメラが存在する部屋ともう一方の部屋の間の空間の奥行きが感じられ、人物の行き来が絵画の連続のようだった。しかもインテリアや自然がとても色彩豊かなので一つ一つの場面が鮮明に印象に残った。

内容としては他の四季の物語には無かった若干の百合感が良かった。また、とにかく会話が多いのも特徴の一つであり、その多さや抽象的な感じは「冬物語」と類似している。劇中で交わされる哲学的な用語の応酬を見ると、彼らにとっての恋愛が普通一般の「顔の好み」や「相性」による恋愛とは異なる次元のものであるように思えた。だからこそ複数の人間の人間関係の変化を興味深く見ることができた。

詩的、絵画的な魅力に満ちた作品だった。
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