闇の魔法使いたちが復権し、恐怖で麻痺した魔法界が、テクノクラート(技術官僚主義体制)っぽく描かれているのが面白い。悪の凡庸さが蔓延るディストピアな全体主義の世界で、悪の帝王ヴォルデモートに立ち向かうハリーは異端分子として吊し上げられている。実は最終章はテーマがSFっぽい。
魔法省も主流新聞も悪の手に落ちたなか、真実を報道し続けているのがルーナ・ラブグッドのパパが発行するオカルト雑誌クィブラーというのもまたSFっぽい。これまでシリウス・ブラックが殺人鬼じゃないという陰謀論を報じ続けたのもルーナのパパだったし、今回「死の秘宝」の秘密を握っていたのだってルーナのパパだった。
いつだってハリーたちの肩を持つのは、父娘揃って陰謀論者のラブグッド親子だ。(ただしクィブラーを封殺したい闇の魔法使いたちがルーナを誘拐した場面は除く)