心理テスト
人との距離感って僕は結構気にしちゃいます。
近すぎず、遠すぎず。
この映画はちょっと近すぎだったかな~。
バグダット・カフェに流れ着いたドイツ人と店主の友情を、
様々な人間模様を織り交ぜて描きます。
クロスプロセスのような独特の色合いが幻想的で、
単にアメリカのどこかの砂漠にあるカフェが舞台なのに、
まるで夢を見ているような不思議な浮遊感。
お酒もない、コーヒーもない、やる気もなければ、客もいない。
こんな寂れた感じが僕にはなんだかしっくりきてしまいました。
この映画で面白いのが、
この空気感が一人のドイツ人女性の登場でガラリと変わるところ。
特に店主ブレンダとドイツ人ジャスミンの仲。
この二人の接近はカフェ全体に活気のある明るさを生み出します。
みるみるとカフェには人が集まってくる。
ただ、余りにも人との距離感が縮まってしまったもんだから、昔からカフェに居着いてる入れ墨師にはちょっと居心地が悪い。
たぶん、この人。
自分の領分に侵入されないように、
人との適度な距離感を保ってカフェの気だるさを満喫していたんだと思います。
実は僕もこの人と同じスタンス。
皮膚に表面的に施される入れ墨って、
人との距離感を象徴してるようで、
内側まで干渉しないところに僕は好感を持ってしまう。
それに比べ後半鍵となるマジック。
疑うことや騙されること自体を楽しもうとするその娯楽性は、人との緊密な関係性を象徴しているような気がします。
どっちのスタンスを良しとするかをこの映画が主張しないところには共感できるけれど、
たぶん後者の方のウェイトが重い。
僕は人が仲良くしている様子より、
仲良しになる過程をみる方が楽しいと思っちゃう。
終盤のミュージカル風なシーンは見せ場ではあるんだけれど、
それをちょっと冷めた目で見てしまう僕って気難しいのかな。
それよりも、ジャスミンと画家の関係性が面白い。
ジャスミンをモデルに絵を描くんだけれど、何だか不思議な空気感。
ジャスミンの花言葉って、
「愛想の良い」や「官能的」なようです。
どちらも人を引き付ける性質。
「愛想の良さ」がカフェの空気を変えたのは間違いなく、
だとしたら画家は「官能性」の方に引かれたんだろうな。
するとラストシーンが興味深い。
画家がジャスミンをどんな姿勢で訪ねたか。
ジャスミンの反応を色々と解釈するのは面白い。
というわけで、この映画。
僕には心理テストのようでした。
誰に共感するかでその人の人付き合いの仕方がわかっちゃう。
自分が抱いてる人との距離感。
近すぎ遠すぎず。
それが良いか悪いかはまた別の機会に。
その答えは他の映画で探ろうと思います。
映画って何だか便利だな。