ヴぇる

バグダッド・カフェ<ニュー・ディレクターズ・カット版>のヴぇるのレビュー・感想・評価

4.1
雰囲気重視というか、その場に自らを投影し家族の様な温かみを楽しむ形の映画だ。

正直言って最初の10分はウンザリしていた。場面転換のカットは急でパッと次に変わってしまうシーンの連続だったからだ。
OPが終わってからは落ち着いてこの映画と付き合ってあげたが、最初がアレではキツいしディレクターズカットと言う割に繋ぎや所々雑な感じも受ける。

ただ30分を過ぎたあたりには今作との距離は時間を重ねる毎に親密になっていき、彼女が去った時にはなんとも言えないエモーショナルな感情が心に湧き上がった。

2人の関係性やカフェにいる人間模様は見ていて落ち着く。本当に今まで観た映画とは違う感情や感想を抱く映画だ。心地よい空間の様な映画は他にもあったが、落ち着いてぬるめのお湯に使っているような包み込んでくれるような不思議な映画だ。
そのせいか知らないが刺青師の彼女が「仲が良すぎる」と出ていったシーンは人間的だし、映画的な雰囲気をさらに上げているように感じる。
彼女のあの瞬間の人生では寂れた様な関係性が居心地が良く、出ていったのだ。彼女自身過去に何かがあったかは知ることは許されないが、未来に幸運が待ち受けていて欲しい。

総評としては、ミニシアターブームを巻き起こしたという触れ込みは想像以上の作品であり、序盤の感想とは変わってしまった。
正直コーリンクユーも最初は普通の曲で何回も使っているな…と感じていたのが最後には何度も聞いていたくなるほと心地よい曲になった。
なんとも不思議な魅力的な映画で、お気に入りの1作になった。
ヴぇる

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